1107909315[house]日本の借家は特に狭い

 確かにどこの国でも借家は持家より狭くその理由は上記のように説明できるのかもしれませんが、日本は他国に比べ特に狭いという問題があります。(前回の国交白書データ参照)
 そしてこれはわが国の借地借家法が原因だと言われています。

  • 借地借家法は戦前に施行された古い法律で、もともとは借家人保護の観点から家賃統制と正当事由制度が柱となっていました。つまり、不当な家賃の値上げから借家人を守り、値上げできないなら退去させようとする家主に正当な理由がなければ退去を強制できないようにすることにしていたわけです。家賃統制は勿論今はありませんが(但し裁判になると家主の希望通りの値上げがなかなか認められないという状態は続いています)、正当事由制度はその後も残り、一旦家を貸すとなかなか出てもらえないという、家主にとって厳しい状態が続く結果となりました。
  • ところがこの借家人保護策が、家主に良質な借家を建てる気をなくさせたという結果を招きました。新しく広い借家は借家人がなかなか退去してくれない(従い借家人交代による権利金収入が取れない)から、借家は狭くて古いままが家主にとっては有利ということになってしまったわけです。
  • この事情は欧米でも同じで、借家人保護策はどの国でもあり、昔は家賃統制と立ち退き制限が日本と同じくセットでとられていたそうです。ただその結果、借家は古い、狭いという品質劣化が進み、問題となった。その結果、家賃統制が取りやめられ良質の借家の供給を促す策が取られるようになったということです。
  • 日本の場合この見直しが遅れ、良質の借家の建設が阻害された状態が長く続いた結果、欧米に比べ借家が狭いということになってしまったようです。ただ現在は定期借家権が導入されるなど借家を取り巻く環境は徐々に良い方に向かい、今後の改善が期待されます。

以上借家の話しが長くなりました。次回からは「いえ」つくりに話しを戻します。
尚、上記は「経済学で読み解く土地・住宅問題」(山崎福寿著 東洋経済新報社)の受け売りです。非常に面白い話しが沢山出ていますので、興味のある方はそちらをどうぞ。

追伸: 同著にも書かれていますが、借家人は弱者で保護が必要というのはいかにも古い発想ですね。今は家を買うか借りるか選ぶ時代になっているし、質の良い魅力的な賃貸住宅がずいぶん増えているような気がします。この点は、別に機会をもうけて考えてみたいと思います。

1107682472*日本の住宅は本当に狭いのか

欧米との比較

 日本の住宅は、随分前ですが海外から「ウサギ小屋」と揶揄されたように、狭いという印象が強いのですが、今でも狭いのでしょうか。
 確かに昔は狭かったのですが、近年は日本の住宅もどんどん広くなって、今では欧米と遜色のないところまで(但し後述のように借家などまだ問題がある部分が少なくありませんが)来ています。

  • 住宅床面積の国際比較(国土交通白書 H16年版)

           日本('98) 英国('96) ドイツ('98) フランス('96) 米国('99)
1戸当たりの平均
  床面積(㎡)    92      84      92       97      151
  −持家      123       92      124       114      157
  −借家        44       65      76      76      113

  • 上の数字から見えるのは、日本の住宅は欧米と同等のレベルまで広くなって来たということです。(因みに昭和43年の平均床面積は74㎡で、この40年弱で24%広くなっています。)特に持家はドイツと並んで米国に次ぐ広さです。
  • 但しこれは全国平均の話しであり、長野や青森、富山、島根、香川など地方の県で平均値が高く、首都圏その他の都市部で低い数値となっています。
  • 更に、日本の借家は欧米に比べ格段に狭く、これが平均値を押し下げる結果となっています。ただ欧米各国でも、借家は持家に比べ狭く(持家の床面積の60〜70%程度)日本だけのことではありませんが、日本は極端に狭いということです。

なぜ日本の借家は狭いのか

 ではなぜ日本の借家がこうも狭くなっているのでしょうか。これには日本の借地借家法が大きく影響していたようです。

この続きは次回とします。

本当の1日目

*昨日の今日なので、まだ挫折するほどの時間も経っていません。気の変わらないうちに書き始めます。
*「いえ」を考え始めたきっかけ
 そもそも「いえ」について考え始めたきっかけは、日本の住宅といえば「ウサギ小屋」だとか、木と紙の家だとか、否定的な言葉ばかり思い浮かぶ一方で、最近住宅は以前に比べてかなり良くなってきているという漠然とした印象があり、本当はどうなのか、あれこれ本を読み始めたことにあります。
 そこで徐々に判り始めた事は:

  • 日本の戸建て住宅は狭くない。欧米と比較しても米国に次ぐ広さがある。
  • ただ賃貸住宅はかなり狭い。これが平均値を押し下げて、日本の住宅は狭いということになってしまう。
  • 日本の住宅価格は欧米に比べかなり高い。土地を別にして建築費だけ見ても高い。なぜか?
  • 日本の住宅寿命は平均26年と極端に短い。米国は44年、英国は75年。なぜか?
  • 日本の中古住宅流通は年15万戸程度と米国などに比べ極端に少ない。これは上記の平均寿命とも密接に関連している。何故こうも少ないのか?

 などなど、欧米と比べ際立った特色が日本の住宅にはあるらしい、ということが見え始めました。これはもう少し突っ込んで考えてみようということで、書き続けてみます。

次回から、これらの点について順次書き綴って行きます。

第1ページ

*今日から開始

  • 初めてのブログ。説明を読んでもなんだかよくわからないけど、とにかく始めてみます。
  • それにしても、最近ブログが話題になることのなんと多いこと。新聞、雑誌、TV(NHK)、山ほどの解説本。つい1ヶ月前までブログなんて言葉も知らなかった小生は、世の進化にキャッチアップしようと大慌て状態。

*テーマ

  • 元来がひどい筆不精なので、テーマを絞り込まないと2日と続かない恐れあり。そんな訳で、最近あれやこれやと考えている「いえ」をテーマにしばらく書いてみようと思います。
  • 雑談的な話や、結構真面目な考察など、われわれの日常生活で最も身近 且つ 重要な「いえ」をいろいろな方向から考えることにしてみます。

それでは明日から本論に。